冬の防寒着の定番の一つであるダウンジャケット。しかし、「ダウン」と言っても価格帯が違えば、中綿の種類や表生地の種類も違います。またダウンジャケットは高ければいい、暖かければいい、というものではなく、その場面場面で最適なものがあります。ここでは、様々なシチュエーションを想定したうえで、どれくらいのものが最適なのかということについて書いていきます。
なお、この記事ではダウンに関する専門用語(フィルパワー、ダウン・フェザー比など)が含まれています。これらの用語は別記事にまとめてありますので、そちらを一読してからこの記事を読んでいただくと理解が深まるかと思います。
*知っておくとためになる、ダウン製品の用語解説
https://outdoor-hacker.com/camp/down-keywords/
ダウンジャケットの選び方
まず、ダウンジャケットはどこをみて選ぶのがいいのでしょうか。もちろん、実際に店舗に足を運び、試着し気に入ったものを購入するのも一つの手です。しかし、その場合でもどのような点を見ればいいのかということを理解しているだけで、アイテム選びが楽しくなります。
ダウンジャケットを選ぶときに見てほしい点は
①ダウン量
②フィルパワー
③中綿の比率
④表生地の性能
⑤中綿の種類
⑥価格
の6点です。
それでは、簡単に解説していきます。
①ダウン量
まず、一番保温性能に直結するといわれているのがダウン量です。ダウン量とは、中綿の量のことです。この量が多ければ多いほど、ジャケットのボリュームが増え、より保温性が高くなります。したがって、ダウン量に着目することが一番重要です。
もしも厳冬期の冬山登山を考えており、保温性を最重要視するならばなおさらです。なぜならば、中綿のダウンがフィルパワー800で比率が90%でも、ダウンの総量が少なければその分保温性が落ちてしまうからです。
このダウン量もホームページの製品情報の部分に記載されています。記載されていない場合は、ジャケット自体のボリューム感で考え、比較してみると簡単です。
②フィルパワー
次に、フィルパワーです。フィルパワーは大きければ大きいほど、保温性が高くなります。基準としては、500以下は低品質、500-600が街で使うのに最適、600-700が冬のキャンプ等におすすめ、800以上が厳冬期の冬山登山に必須、といった具合です。
しかし、ダウンの保温性はフィルパワーだけでは判断できません。
③中綿の比率
ダウンジャケットのほとんどは、中綿が「ダウン」と「フェザー」を混ぜ合わせています。このダウンとフェザーの比率によっても保温性が変わってきます。なぜならば、ダウンはフェザーよりも保温性が高いからです。
したがって、フィルパワー800のダウンでも比率が70%ならば、保温性は落ちてしまうことになります。
しかし、ダウンが多ければいいというわけではなく、フェザーが多いことによって通気性を確保しているものもあります。
④表生地の性能
さらに重要なのが、表生地の性能です。ダウンジャケットで特に重要なのが、表生地の防水性能です。なぜならば、ダウンは水がかかると水を吸ってしまい、小さくなってしまいます。その結果、羽毛が暖かい空気を保持することができずに保温性が著しく低下してしまうからです。
現在、アウトドアブランドのダウンジャケットは表生地として「DWR加工」や「Pertex Quantum®」の撥水加工生地等、様々な防水対策がとられていますが、安いものの中には全く撥水加工のされていないダウンもあります。撥水加工がとられていない場合、ナイロン生地は水の浸透率が高いので、すぐに中綿が濡れてしまい、保温性を保てなくなります。したがって、中綿だけではなく表生地にも注意を払うことが重要です。
⑤中綿の種類
ダウンジャケットの中綿は、水鳥の羽毛です。この羽が温かい空気を含むことによって、保温性を保っています。
その水鳥の羽毛も、何処で生産されているのか、どの鳥からとったのかという点で違いがあります。
例えば、現在流行中のカナダグース。これはブランドの名前ですが、ダウン生産国のカナダで取れた、グースの羽毛を使っています。
アウトドアブランドでも、ホームページに「ポーランド産のダックダウン」「ハンガリー産のグースダウン」といったように記載されていることもあるので、注目してみてください。
⑥価格
それに加えて、価格が一つの要素として加わってきます。これらの5つの要素は、高品質、高性能になるほど、価格はどんどん跳ね上がります。それに加えて、ダウンはもともと高価な素材です。必要なシチュエーションを考え、性能を取捨選択することによって、余分な出費を抑えることにもつながります。
シチュエーション別に考える最適なダウンの例
これらの点を踏まえて、シチュエーションごとに最適なダウンを考えてみます。
シチュエーション① 春から秋の登山(3シーズンダウン)
まず、春から秋の3シーズン使えるダウンです。このダウンは、山だけではなく肌寒くなった街着としても使え、汎用性が高いので一つ持っておくと何かと便利です。
保温性はそれほどなくても良いので、薄手のフィルパワーが500程度、ダウン70-80%・フェザー30-20%のものを選ぶといいでしょう。
もし街着のアウターとして着たい場合は表生地に撥水加工が施されているものを選びましょう。もし、上にレインウェアやコートを着る場合は、なくてもいいかもしれません。
また、登山に使う場合はできるだけ小さく収納できた方が便利です。その場合ダウンの比率が高いほうがより軽くコンパクトにできます。
シチュエーション② 冬の街で着る場合
街での行動の特徴は、コンビニやオフィス、そして電車などの乗り物内への出入りが多いことにあります。冬の場合、これらの施設や車内は暖房が効いており、高性能なダウンを着たままではオーバーヒートしてしまう可能性もあります。脱げばいいですが、もしカバンなどを持っていたらいちいち着たり脱いだりすることはめんどうですよね。
また、地方にもよりますが、東京などの都心部では氷点下の温度になることは珍しく、厳冬期の冬山登山用のダウンジャケットはオーバースペックとなってしまいます。
したがって、最適なダウンは中厚手のフィルパワーが500-600程度、ダウン・フェザー比がダウン70-80%・フェザー30-20%のものを選び、ある程度の通気性を確保しておくと室内に入って少し行動していても快適です。
また、傘を使うならば表生地の防水性能も低めでも良いかもしれません。性能を少し下げることによって、価格を抑えられるのが街着としてのダウンジャケットの良い点です。
シチュエーション③ 秋ー冬のキャンプ
次に、秋ー冬のキャンプを想定しましょう。紅葉の綺麗な季節は、先ほど紹介した街で着るダウンジャケットとほとんど同じでいいと思います。もし夜に外に出て天体観測等をする場合や、落葉の季節のキャンプの場合は、もうすこし保温性能が良いダウンを用意するべきです。
冬キャンプの場合、日中も気温が一桁、夜には氷点下になります。その場合必要なのは、ダウン量が多く厚手で、ダウン・フェザー比が80-90・20-10、フィルパワーが最低600、できれば700-800あり、急な天候の変化や朝露に濡れても大丈夫なように表生地に撥水加工のしてあるものが最適です。
火に強いダウン
ちなみに、冬キャンプの定番といえば焚火ですが、ダウンジャケットの表生地はポリエステルでできているので、火の粉が軽く当たっただけで穴だらけになってしまうので注意しましょう。
盛大に焚火をしたい場合は、Nanga®から難燃素材のケプラーを混紡した「焚火ダウンジャケット」というものが販売されているので、ぜひご覧ください。
こちらは、ホワイトダックダウン、ダウン80%フェザー20%、フィルパワーが750程度と冬のキャンプにはうってつけのダウンジャケットです。
シチュエーション④ 冬山登山
冬山登山は、一歩間違えれば命の危険がある世界。そのような世界に足を踏み入れるからには、装備に妥協はできません。したがって、ダウンジャケットもより温かいものを選ぶのがいいでしょう。
しかし、街やキャンプと違い、ダウンジャケットを着たままザックを背負って歩くということはあまりありません。なぜなら、ダウンジャケットの役割は止まっているときに体が冷えないようにするための保温だからです。基本はザックに入れて、雨や雪から濡れないように守り、山小屋等に到着したら着る。したがって、小さくなり携行性が高いほうがいいです。
おすすめのダウンは、ダウン量が多めの中厚手から厚手のフィルパワー800-900、そして、ダウン90%のものがいいでしょう。なぜなら、保温性が高く、軽く、小さくなるのでザックの中にも楽々入れられるからです。
まとめー自分が使うシチュエーションに合ったダウンジャケットを
ダウンジャケットはどれも同じではなく、使用するシチュエーションによって向き不向きがあるアイテムです。
この記事では、実例としてダウンジャケットが活躍する四つのシチュエーションを例にとって紹介してきましたが、その街の気温、キャンプ場の気温や天候、山の天気によって、必要なダウンジャケットは変わってきます。事前にキャンプ場の天気を知り、ダウンジャケットを選ぶことは非常に難しいですが、大体どの程度のものを用意すればいいのかということを、今回の例と予算との兼ね合いの中で考えてもらえればと思います。
岩と自転車をこよなく愛するが、普段は用事がないと家から出ないインドア派。何事も形から入るタイプで、ギアの知識だけは人一倍。ギア好きをこじらせてアウトドア用品店でバイトをしていました。人生の3分の1を海外で生活し、現在もヨーロッパにて勉強中。海外のアウトドア文化も発信していければと思っています。
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