寒い季節の防寒着の定番であるダウンジャケットやシュラフや布団などに使われているダウン。軽くて、保温効果が高いのが魅力です。しかし、ダウンを使った製品といっても数千円のものから数万円のものまで、様々な種類のものがあります。「ダウン」だからどれも同じと思われていますが、実は中に入っているダウンの種類や性能によって値段や保温性能が変わってくるのです。
この記事では、ダウン製品を実際に選ぶ前の知識として知っておいたほうがいい用語解説をしたいと思います。
ダウン
(出典:寝心地探求気候「羽毛布団のダウン率」より)
「ダウン」は漠然と「鳥の羽毛」と思われていますが、正確には「水鳥の羽毛」です。この羽毛には骨がなく、タンポポの綿毛のように放射状に細い羽毛が伸びています。この細かい毛が密集した隙間に暖かい空気が溜まるため、内側の暖かい空気は外に逃がさないようにし、外の寒い空気を遮断するという役割を担っています。
ダック、グース
ダウンは、多くの場合がガチョウやアヒルの胸の部分からとられ、ガチョウはグース、アヒルはダックと記載されていることが多いです。ガチョウやアヒルはフランス料理のフォアグラなどの食用目的で生産されているものから採取される場合がほとんどです。
マザーグース、マザーダック
高級なダウン製品の中には、マザーグースやマザーダックのダウンを使用している点を売りにしているものもあります。マザーは、食肉生産の過程で卵を生むために飼育されている鳥で、飼育期間が長く大きなダウンボールをとることができるので通常よりも大きく、弾力があり保温性に優れたダウンをとることができます。
ダウンの生産地
ダウンは、様々な産地で生産されています。主な生産地としては北欧や東欧、アイスランドなどの北極圏、そして北米などの寒暖差の激しい地域や寒冷地で、そこで採取されたものは高品質であるとされています。なぜならば、ダウンはもともと、寒さから鳥の身を守るために生えているものだからです。
有名な生産国としては、カナダ、ハンガリー、ポーランド、フランス、アイスランドなどです。
カナダは、北極圏付近は非常に寒くなるため良質なダウンが採取できます。近年流行している「カナダグース」のダウンの保温性が高いのはそのためです。
ハンガリーは寒暖差が激しい気候に加えて、フォアグラの名産地としても有名です。そのため、ガチョウやアヒルの飼育に力を入れており、多くの良質なダウンを生産することが可能になっています。また、ハンガリー産のダウンは比較的安価なため、ヨーロッパ内で流通しているダウンの多くはハンガリー製です。
ポーランドも大規模かつ厳しい品質管理のもと羽毛生産を行っています。ポーランドも寒冷地なので、大きく弾力のあるダウンボールを生産することができます。
フランスもダウンの生産を行っており、主にピレネー山脈を要するピレネー地方で生産が行われています。
アイスランドは、大規模な生産を行っていませんが、アイダーダックという野生のカモが多く生息している地です。アイダーダックはアイスランドの厳しい冬を乗り越えるために、厚く良質な羽毛を貯えます。それを、冬が終わったころに巣から10-20グラム取ります。それが、アイダーダウンです。そのため、一年の生産量としても多くを確保できないため、非常に高価になり「羽毛の宝石」と言われます。
フェザー
ダウン製品のラベルを見てみると、中綿と表記された部分に必ず「ダウン90%、フェザー10%」というように、比率が記載されています。ダウンは先ほど解説しましたが、フェザーとはどういったものでしょうか。
フェザーは、羽軸がある羽のことで、一般的に想像する鳥の羽のような形をしています。このフェザーは羽軸があることによって、弾力と通気性がありダウンの通気性を確保してくれたり、形を綺麗に保ってくれます。その反面、ダウンに比べると保温性が落ちてしまう、羽軸があることによって縫い目から飛び出してくるというデメリットがあります。
しかし、ダウンよりも圧倒的に安価にダウン製品のボリュームを出すことができるので、ダウンを70-90%にし、残りをフェザーで埋めているのがほとんどです。数十万するようなダウンジャケットにはダウン100%のものもあります。
フェザーの種類
フェザーにはラージフェザーとスモールフェザーの二種類があります。スモールフェザーは、6.5センチ以下のフェザーのことを指し、お腹に生えているフェザーです。比較的に高いダウン製品のフェザーはスモールフェザーです。特徴は、弾力があり羽軸が柔らかいのでふわふわ感があります。
一方で、ラージフェザーは翼の部分のフェザーです。一般的に膨らみが少なく、弾力がないので保温性が劣り、ジャケットがすぐにぺしゃんこになってしまいます。また、羽軸が固いので触った時に凸凹を感じてしまったり縫い目から飛び出やすくなります。一方で、安価に調達できるというメリットがあり、製品自体の価格を抑えることができます。
ダウン・フェザー比
これは、中綿のダウンとフェザーの比率をあらわすものです。先ほども少し書いたように、一般的にはダウンが70-90%、残りがフェザーという場合がほとんどです。ダウン製品の内ラベルには必ず比率が書いてあるので、購入をする前に見てみましょう。 一般的にダウンの比率が高ければ保温性が高いといわれています。
ダウン量
ダウン量は読んで字のごとく、ダウンの量です。これは、商品の説明ページやラベルに記載されていることが多いです。ダウンの量が多ければ多いほど、保温性は高くなり、よりボリューム感が出ます。
フィルパワー(FP)
(出典:株式会社デザント「よくある質問 - フィルパワーとは何ですか?」より)
ダウン製品を選ぶ際に必ず目にするフィルパワー(FP)という用語です。
フィルパワーとは、簡単にいえばダウンの膨らみ具合を表す指標です。ダウンの羽毛一つ一つが大きく膨らむほうがボリュームが出て、保温性が高くなります。また、弾力も高くなって再現性も高くなるので、へたりにくく圧縮した後にもすぐに戻ってくれます。 フィルパワーの数字は、ダウン30gが何立方インチの体積に膨らむのかということをあらわしたものです。例えば、フィルパワー700であれば、30gのダウンが700立方インチに膨らんだということです。
フィルパワーは数字が大きいほど膨らむ能力が高いので、保温性も高くなります。したがって、中綿の比率にもよりますが、数字が大きければ大きいほど保温性が高くなります。しかし、それはダウンの質が良いということなので価格もその分高くなります。
一般的な指標としては、フィルパワーが500以下のものは品質がよくなく、保温性も低いです。もしも冬のアウトドアアクティビティで使うならば600以上は確保したいところです。実際、多くのアウトドアブランドのダウンはフィルパワーが600-800あります。
まとめ
この記事では、ダウンジャケットやシュラフを選ぶときに知っておくとよりアイテム選びが楽しく、簡単になるように用語を解説しました。これらの用語を知ったうえで、実際にお店に足を運びフィルパワー500と700の違いを肌で体感したり、異なるダウン・フェザー比のジャケットを触ってみてさわり心地を試してみたりするとより実感として違いが分かるようになります。ぜひ、用語を頭の片隅に入れて、お店に足を運んでみてはいかがでしょうか。
(19/09/30追記)
具体的な使用シチュエーションごとに最適なダウンジャケットの選び方を解説した記事を寄稿しました。よろしければあわせてご覧ください。
*シチュエーション別に考える、ダウンジャケットの選び方
https://outdoor-hacker.com/camp/down-jacket-select-points/
岩と自転車をこよなく愛するが、普段は用事がないと家から出ないインドア派。何事も形から入るタイプで、ギアの知識だけは人一倍。ギア好きをこじらせてアウトドア用品店でバイトをしていました。人生の3分の1を海外で生活し、現在もヨーロッパにて勉強中。海外のアウトドア文化も発信していければと思っています。
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