ベアフットシューズというものをご存知でしょうか。
ベアフットシューズとは「裸足の靴」、つまり裸足感覚で歩けたり走れたりするシューズのことです。山で歩く時の歩き方が身についたり、平地で筋力トレーニングができるので登山をする人にもお勧めです。
筆者がベアフットシューズと出会ったのは10年近く前、部活用に初めてNIKE FREEを購入した時です。NIKE FREEは、裸足感覚でランニングができるシューズとして2004年に発売され、話題になりました。
それからもう15年経過し、今や様々なベアフットシューズが開発、販売されています。
この記事では、初めてのベアフットシューズからずっと魅了され、現在でも履き続けている筆者が、その魅力、選び方、そして体感している効果を紹介したいと思います。
ベアフットシューズの魅力
まず初めに、ベアフットシューズの魅力から紹介していきます。
1. 歩き方が矯正され、怪我の防止が期待できる
筆者が感じている一番の魅力は、歩き方の矯正です。
正しい歩き方は、踵の外側からの着地なので、外側から減っていくのが正しい減り方になります。もし、靴に違った、例えば踵の内側が減っている、中央部が擦れている、靴の側面が減っているという特徴がみられる人は、猫背であったり体のバランスが悪い可能性が高いです。
歩き方が悪いと、膝や腰に負担がかかったり、姿勢が悪くなったりと体に不具合が出てきてしまいます。
これらの症状の人は、ベアフットシューズを履くことによって歩き方が矯正されると思います。筆者もベアフットシューズを履くまでは、内側が減っていく歩き方をしていましたが、ベアフットシューズを履き始めてから改善されました。
現在では4年以上履いているブーツでも、踵の外側の減りは全くといっていいほどありません。この歩き方の改善のおかげで、普通の靴も長持ちしているように感じます。
また、このような個人的な感想だけではなく、ベアフットシューズメーカーであるVivobarefootによれば、アメリカのAmerican Academy of Physical Medicine and Rehabilitation(物理療法とリハビリテーション学会)とハーバード大学が、2010年に裸足の効果を論文として提出しました。この論文の結論によれば、裸足は怪我の防止や歩く技術の向上が期待できると述べられています。
2. 登山に効果的な歩き方が身につく
ベアフットシューズのほとんどはソールが薄く、柔らかく、フリクション(摩擦)がよく効くようになっています。そのため、足を地面すれすれで、踵から着地するような歩き方をすると、すぐに踵が痛くなったり地面との摩擦による抵抗を感じます。
それらを避けることによって身につくのが登山に最適な歩き方です。
登山での歩き方の基本は、足を高めに上げ、足全体で着地するということです。ベアフットシューズを履いていると、足全体で着地しなければ一部分が痛くなってきます。また、ソールのフリクションと足全体での着地の意識によって、自然と足を上げるようになります。
それに、ベアフットシューズは快適性を重視しておらず、正直普通に歩いていても疲れやすいです。そのため体は、どうにかして疲れにくく、効率のいい歩き方を自然と編み出します。こういった自然な矯正効果がベアフットシューズの魅力の一つです。
3. 筋力トレーニングになる
多くのメーカーが謳っている通り、ベアフットシューズは筋力トレーニングにもなります。
ベアフットシューズを履いていると、靴のサポートがなく自分で地面を蹴って歩かなければなりません。そのため、一日中履いているとふくらはぎが疲れてきます。この筋肉は、普段は歩くために使わない筋肉で、そこをしっかりと鍛えることができます。
しかし普段使わない筋肉のため、いきなり激しいトレーニングをしてしまうと怪我につながる可能性もあります。そのため、ベアフットシューズを取り扱う専門店では、もし初めての場合はいきなりランニングをせず、ウォーキングや日常生活に取り入れることで慣れてから本格的なトレーニングに移行することを推奨しています。
ちなみに、筆者が一時期暮らしていたニュージーランドでは、学生たちは寒い冬の日でも、体育の時間や休み時間に運動するとき、また庭で遊ぶ際にも、靴を脱いで裸足で走り回っていました。ラグビーワールドカップで一躍有名になったオールブラックスの足腰の強さは、このような裸足で運動する習慣から作られているのかもしれません。
ベアフットシューズの特徴
次に、ベアフットシューズの特徴を紹介していきます。
ベアフットシューズの特徴は、それぞれのシューズによって違います。ソールが薄かったり、切れ込みが入っていたり、足型になっていたり、柔らかかったりと、異なるアプローチでより裸足に近づけようとしています。
NIKE FREEの場合
(画像出典:Nike Free RN Flyknit 3.0 Herren-Laufschuh. Nike DEより)
ベアフットシューズブームの火付け役となったNIKE FREEは、形こそ昔からだいぶ変わっていますが、ソールに切れ込みが入っていて柔軟性を持たせることによって裸足感覚に近づけているという特徴は変わりません。
この切れ込みがあることによって靴が曲がるため、歩く時の蹴り出しを自分の力で行わなければならないので、筋力の増強に繋がります。実際に履いてランニングをしてみると、靴の反発のサポートがないので自分で地面をけらなければいけないという違和感があります。
加えて、ソールが柔らかく厚いため、コンクリートの上をランニングするときに問題となる膝への負担が少なくなります。
Vivobarefootの場合
(画像出典:Vivobarefoot Primus Lite II Men | VIVOBAREFOOT Germanyより)
筆者が現在愛用しているVivobarefootという会社のベアフットシューズは、柔らかいソールをハニカム構造にし、柔軟性を持たせることによって足の形が直に靴に伝わるという構造をしています。
ソールのハニカム構造によって、凹凸があるときは部分的にへこみます。それに加えてソール自体も薄いので、道の凹凸を直に感じることができるのも特徴的です。
見た目が普通の靴と変わらないので日常生活の中に取り入れることができるのも特徴の一つです。
また、このブランドはランニングシューズからトレッキングシューズまで様々な種類のものがあるので、自分に合わせた靴を選ぶことができます。
Vibram Furoshikiの場合
(画像出典:vibram-fiveingers.deより)
登山靴やクライミングシューズのソールで有名なVibramも、実は数年前からベアフットシューズの開発に取り組んできました。
このタイプのシューズの特徴はソールが薄く、柔軟性があるという点です。ソールが薄いので、小石やコンクリートの凹凸など地面の特徴を、しっかりと足の裏で感じることができます。
またソールに柔軟性があるので、未舗装道路を歩いているときに、地面の凹凸を感じて自分で力を入れてバランスをとらなければいけません。そのため、バランスをとるトレーニングになります。
またソールが薄いため、踵から着地すると負担が大きくなってしまいます。そうすると歩いているうちに、自然に足の全体で着地する歩き方に変化していきます。この足の全体で着地するという歩き方は登山においても重要なテクニックの一つなので、自然に矯正できるのもいい点です。
一方で、ソールによるサポートがほとんどないので、コンクリートなどの硬い地面では足への負担が大きく、初めての方や膝を痛めていたりする方は注意が必要です。
Vibram Fivefingersの場合
(出典:M148 | Vibram Five Fingers / Barefootincより)
最後に紹介するのが、見た目から特徴的な五本指シューズ、VibramのFive fingersです。
これは見た目の通りそれぞれの指が独立しており、究極のベアフットシューズと言えます。
履いている感覚的には、靴というよりも手袋を足に付けているような、そんな風に感じます。指の動きが制限されないのでしっかりと力を入れることができ、トレーニング効果も抜群です。
デザインが奇抜なので日常生活に取り入れづらいことだけが欠点です。
ベアフットシューズの選び方 ー用途を明確化するー
次に、ベアフットシューズの選び方を紹介していきたいと思います。
筆者が個人的に選ぶ特に気を付けているのが、用途を明確にするということです。
ベアフットシューズの用途としてはランニング、ウォーキング(日常生活)、トレッキング(アウトドアアクティビティ)の三つに分けられると思います。
合わせて、オススメのシューズも紹介していきます。
ランニングに使う場合
ランニングに使う場合、しっかりとソールが分厚いNIKE FREE RUNタイプのものが最適です。
特に初めてのベアフットシューズの場合、慣れていないと膝や腰への負担がかなりあり、怪我につながる可能性が高いので、厚いソールのクッション性でしっかりとサポートしたほうがいいです。
中でもアスファルトの道でランニングする場合は、土の地面に比べて硬いので、足に負担がかかります。そのため、しっかりとソールのサポートがあるランニングシューズタイプのベアフットシューズがいいでしょう。
オススメのシューズ
オススメのシューズとしては
・NIKE FREE RUNシリーズ
(画像出典:Nike Free RN 5.0 Herren-Laufschuh. Nike DEより)
NIKE FREE RUNシリーズは都市でのランニングを特に重視して作られているため、クッション性が高く、足への負担が少なくなっています。そのため、ランニングにおすすめです。
・NEW BALANCE MT10シリーズ
(画像出典:【NB公式アウトレット】ニューバランス | MT10UB:シューズ|New Balance【公式通販】より)
おしゃれなスニーカーとして有名なNEW BALANCEも、ベアフットシューズを販売しています。このシューズはソールにビブラムを使用しており、都市でのランニングよりはトレイルランニングに重点を置いています。しかし、ソールが厚めになっているので都市でのランニングにも使用できます。
・MERRELL BARE ACCESS XTR
(画像出典:BARE ACCESS XTR | MERRELLより)
トレッキングシューズやアウトドア用のシューズで有名なMERRELLも、ベアフットシューズを販売しています。このBARE ACCESSは、運動の際に使うことに重点を置いているので、ソールが厚めに作られており、着地の衝撃からしっかりと足を守ってくれます。
ウォーキング(日常生活)で使う場合
ウォーキングや日常生活で使う場合は、ランニングシューズタイプか、慣れてきたらVivobarefootタイプのような薄いソールのものがいいと思います。
ソールが薄いタイプの利点は、地面の凹凸が感じられてバランスをとる感覚が養われるということです。しかし一方で、日常生活で歩くところはコンクリートがほとんどのため、慣れていない状態では足に負担がかかり、疲れてしまう場合もあります。
オススメのシューズ
オススメのシューズとしては
・NIKE FREE RUNシリーズ
(画像出典:Nike Free RN 5.0 Herren-Laufschuh. Nike DEより)
ランニングのところでも紹介しましたが、NIKE FREE RUNは日常生活にもおすすめです。なぜなら、ソールが厚くてクッション性があるので比較的疲れにくいからです。また、デザインもおしゃれで、形やカラーバリエーションが豊富なので、自身のファッションに合わせて選ぶことができるのも魅力です。
・Vivobarefoot RA II
(画像出典:Vivobarefoot Ra II Men Wild Hide | VIVOBAREFOOT Germanyより)
Vivobarefootは、他のメーカーに比べて革靴タイプやスニーカータイプなど、日常生活に溶け込むようなデザインのベアフットシューズを販売しています。このような見た目ですが、薄いソールとハニカム構造によって、しっかりとした足裏の感覚、そしてトレーニング効果を得ることができます。
欠点は、日本で正式な取り扱いがないとこです。しかし、公式ホームページからの購入では日本への発送を行っています。送料はかかってしまいますが、気になる方は購入してみてもいいかもしれません。
・MERRELL MOVE GLOBEシリーズ
(画像出典:MOVE GLOVE SUEDE | MERRELLより)
次に紹介するのが、MERRELLが新たに発売したMOVE GLOBEというベアフットシューズです。
このシューズは、ソールが薄いのにしっかりとクッション性があるという特徴を持っており、それを実現しているのがPORON VIVEというクッションと、VibramのMagagripというアウトソールです。
このシリーズにはノーマルとスエードの二つがあり、上の画像のスエードは普段使いのスニーカーのような質感で、日常生活に取り入れやすくなっています。
トレッキング(アウトドアアクティビティ)で使う場合
次に、トレッキングで使う場合を想定してみます。
トレッキングには、トレッキング用のベアフットシューズを使うのがいいと思います。あまり種類は出ていませんが、Vivobarefootが販売しています。特徴としては、ソールが普通のものよりも厚めに作られていて、尚且つトレッキングブーツのようにミッドカットなので、しっかりと足が固定され、山道を快適かつ安全に歩けるという点です。
慣れてきたらFivefingersなどのトレーニング効果の高いシューズで歩いてみるのもいいかもしれません。その際は、ねん挫には十分に注意してください。
オススメのシューズ
オススメのシューズは、
・Vivobarefoot Tracker Firm Ground
(画像出典:Vivobarefoot Tracker Firm Ground Men | VIVOBAREFOOT Germanyより)
まず初めに紹介するのが、数少ないブーツ型のベアフットシューズであるTracker Firm Groundです。
このブーツはトレッキングシューズと同じようにアッパーがレザーで、しっかりと足首を固定できるようにミッドカットになっています。そのため、しっかりと足首を保護するとともに、少し厚めに作られているハニカム構造のソールが小石などから足裏を守ってくれます。
一方で、ソールは柔らかくしっかりとしたベアフット感があるので、新たなトレッキング体験を得られることができるでしょう。
・Vibram Fivefingers V-Trek
(画像出典:19M7401 | Vibram Five Fingers / Barefootincより)
次に紹介するのが、Vibramの五本指タイプのV-Trekです。
このシューズは他のFivefingersと比べて、4mmのソールを採用し、足の保護と耐久性を高めている点です。アッパー素材もウールと化学繊維の混紡素材で、耐久性と防寒効果があります。トレッキングとベアフットシューズに慣れた方にオススメです。
気になったら日常生活から取り入れてみよう
ここまでベアフットシューズの魅力を紹介してきました。
もし気になった方がいれば、まずは日常生活から取り入れてみることをおすすめします。ベアフットシューズは普通の靴とは少し勝手が違うので、履いてみて、慣れてからランニングやトレッキングにステップアップするのが、安全性の観点からもいいと思います。
一度慣れたら病みつきになるベアフットシューズを、一度履いてみてはいかがでしょうか。
(アイキャッチ画像出典:M148 | Vibram Five Fingers / Barefootincより)
岩と自転車をこよなく愛するが、普段は用事がないと家から出ないインドア派。何事も形から入るタイプで、ギアの知識だけは人一倍。ギア好きをこじらせてアウトドア用品店でバイトをしていました。人生の3分の1を海外で生活し、現在もヨーロッパにて勉強中。海外のアウトドア文化も発信していければと思っています。
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