近年盛り上がっているスポーツの一つに、ボルダリングがあります。オリンピックの競技にも選出され、都内にも多くのジムが開店しています。
ボルダリングの魅力は、何と言ってもその手軽さです。用意するのは靴と服、そしてチョークだけ。一人でも行けるし、事前に予約をする必要もありません。
しかし、初めての方は何が必要なのか、どれくらいのコストがかかるのかなど、わからないことが多いと思います。そこで今回、ボルダリングに必要なもの、かかるコスト、初心者に向けてのちょっとしたアドバイスを書いていきたいと思います。
ボルダリングができる場所
ボルダリングは、ボルダリングジムやクライミングジムでできます。スポーツジムや市が運営する総合運動施設などに施設がある場合もあります。
しかし、総合運動施設の場合、クライミングシューズの貸し出しや初心者への説明が無かったりするので、最初はクライミング専門の施設に行くのがオススメです。
多くのジムでは初心者用のコースが用意し、経験豊富なスタッフがボルダリングのルールやコツをしっかり説明してくれます。また、必要なものはすべてレンタルできるので、手ぶらで行っても大丈夫という点も魅力です。
ボルダリングとリードクライミング
ボルダリングを始めると、クライミングやリードクライミングなどいろいろな名前を耳にすると思います。
クライミングは壁や岩を登る一般的な呼び方で、その中でボルダリングやリードクライミングなどのスポーツに分かれます。
ボルダリングは、ロープ無しで比較的低い壁や岩(ボルダー)を登るスポーツです。それに対して、リードクライミングは高い壁(10〜40m)をロープなどを用いて登るスポーツです。
Googleなどで「クライミングジム」と調べた場合、リードクライミング用のジムが出てくる場合もあるので、しっかり確認してください。
ボルダリングに必要なもの
ボルダリングに必要なものは、以下の通りです。
・運動がしやすい服(シューズをレンタルする場合は靴下も)
・クライミングシューズ(レンタル可)
・チョーク(レンタル可)
たったこれだけで始められます。
運動がしやすい服
ボルダリングのために特別な服を用意する必要はありません。普段着のような格好で登っている人もいます。
たとえば、筆者はユニクロの伸縮性のあるデニムパンツやTシャツで登っています。室内のボルダリングは、体質にもよりますが、真夏でもない限り大汗はかかないので、速乾性のあるTシャツでなくても大丈夫です。普通のコットン製のTシャツでも快適に登れます。
そのため、最初は少し古くなったTシャツや他のスポーツで着ていた短パンで十分です。なければ、ユニクロやGUなどの伸縮性に富んだズボンを用意して行くといいと思います。
クライミングシューズ
クライミングシューズはレンタルできるので、今すぐ用意する必要はありません。また、サイズが普通の靴と違って特殊なので、ジムでレンタルしてサイズ感を知り、店員さんと相談しつつ買うのが一番いいです。したがって、初めはレンタルシューズで始めましょう。
チョーク
チョークもレンタルできるので、事前に用意する必要はありません。
チョークとは、手の汗を吸い、滑りにくくしてくれる粉です。手汗をかかないのでチョークを必要としない人もいますが、安全のため初回はレンタルするといいでしょう。
ボルダリングのコストについて
初回は、諸々含めて4000〜5000円ほど用意しておけば十分でしょう。
ボルダリングジムの利用料
ボルダリングジムは一回1000〜2000円前後です(場所やプランによって違います)。場所によっては別途、初回登録料がかかります。
続けていく場合は、月や年単位の利用券を買えば安くなります。
レンタル料金
初回は、シューズとチョークをレンタルすることになります。料金は、シューズが300〜500円程度、チョークが100円くらいです。
続けていく場合は、シューズを購入することになりますが、1万5000円〜2万5000円で1〜2年は使えます。チョークは、チョークバッグが3000円程度で、チョークが1000円前後で約3ヵ月もちます。
注意事項
ジムが用意している初回コースを受ければ、注意事項を教えてもらえますが、無い所もあるので、ここでも説明しておきます。
また、事前に知っておいたほうがいいこともあるので、目を通してみてください。
次の日に予定がない日を選ぶ
まず、ボルダリングは普段使わない筋肉を多く使うスポーツです。普段からハードにトレーニングしている人以外は、確実に筋肉痛になります。それも、久しぶりに走った時の筋肉痛など比にならないくらい深刻な痛みです。
筆者が初めてボルダリングに行ったとき、その日の帰りは、車のハンドルを握るだけで手のひらに痛みが走る状態でした。次の日、起きると全身が筋肉痛になり、ペンを持てない、文字を書いても蛇のようになる、一度椅子に座ったら最後、立ち上がれない、そんな状態になっていました。
それから数日たって筋肉痛はおさまったものの、完治するまでには1週間かかりました。
そのような状態になるので、初めて行く日は慎重に選びましょう。土日が休みなら金曜日の夜に行くのが最適だと思います。土日は家でゴロゴロすることになりますが。
なお、筋肉痛は初回のみで、2回目からはほとんどなくなるので安心してください。
無理なく楽しむ
ボルダリングは、少しの気の緩みが我に直結する危険なスポーツです。床はふかふかのマットになっているので安全と思いがちですが、これまで何人も着地に失敗して大きな怪我をしてしまった人を見てきました。
無理して上まで登ると、降りる体力がなくなったり、力尽きて無理な体勢で落ちてしまいます。初めのうちは、余裕をもって登ってみてください。
また、集中力がなくなったり、体力的に限界を感じたら、その日は終わりにしましょう。最後の1回と言って、満身創痍で臨んで怪我をしてしまった人も知っています。
いくら楽しくても、また思ったように登れなくて悔しくても、止め時はしっかり見極めるようにしてください。
グレードに気を配る
ジムに行くと、いろいろな色と大小さまざまなホールドが壁に固定されているのが目に入ります。しかし、このホールドは、好きに登っていいわけではなく、スタートからゴールまでルートが決まっています。そのルートごとに難易度が設定されています。
難易度は「級」や「段」で表されます。10級から1級へ難しくなっていき、その次から段に入ります。こちらは初段から順に難しくなっていきます。色で難易度を示しているジムなどもあるので、分からなければ、スタッフや周囲の上級者に教えてもらいましょう。上級者クライマーは話好きな人が多いので、親切に教えてくれる場合がほとんどです。
初心者は、まず7〜6級を目指してみましょう。5級からはクライミング特有のテクニックや筋力が必要になってくるので、登れたら周囲に自慢できますよ。
爪を切っていく
爪はしっかりと切っていきましょう。目安としては、指の肉から爪がはみ出さない長さです。長すぎると壁で削れたり、最悪引っかかって剥がれたりする場合もあります。
レンタルする場合は靴下を忘れずに
クライミングシューズは裸足で履く人が多いです。そのため、レンタルの場合は自身で靴下を持参しなければいけません。薄い使い捨ての靴下を用意している施設もありますが、まだまだ少ないです。
靴下はその日に履いているものをそのまま使ってもいいですが、できれば綺麗な靴下を用意しておきましょう。また、薄いほうがクライミングシューズとの一体感を感じられるので、おすすめです。
常に周囲に気を配る
特に友人などと一緒に行った際に起こりがちなのが、盛り上がりすぎて周りに注意がいかなくなってしまうということです。
基本的に壁一面に対して一人しか登れないので、仲間内だけで交代して登っていてはその壁を占領してしまうことになります。他に登りたそうにしている人がいないか、常に気を配りましょう。
また、話しながら移動していると、どうしても注意が散漫になってしまい、登っている人に気が付かなくなってしまう場合もあります。もし登っている人が落ちてきて衝突すれば、ぶつかったほうもぶつかられた方も大怪我を負ってしまう恐れがあるので、常に周囲に気を配りながら楽しんでください。
ホールドの穴には指を入れない
壁についているホールドはボルトで固定されています。したがって、ホールドにはどうしても穴ができてしまいます。
ホールドにもよりますが、大きいサイズのものは深くまで穴が開いていることがあり、指一本なら入ってしまいます。しかし、そこは正式な持ち手ではなく、また非常に危険なので、間違っても入れないように気を付けましょう。
周りと差がつく初心者へのアドバイス
ここからは、初心者へちょっとしたアドバイスを伝えていきたいと思います。
基本的なポイントとしては、力まないこと、足を必ずついておくことを覚えておけば、大丈夫です。
周りを観察してみる。時には聞いてみる
ジムに行くと大体どの時間帯でもうまい人がいます。ボルダリングの上級者は大体が話し好きなので、登り方がわからなかったら、その方が休憩中などに聞いてみてください。丁寧に教えてくれる場合が多いですよ。
また話すのが怖くても、見ているだけでも勉強になるので、ぜひ観察してみましょう。特に以下で紹介するようなポイントを観察してみてください。
腕と肩の力を抜き、力みすぎない
初心者に最もありがちな失敗が、力みすぎです。ボルダリングは、見た目から「力が無ければ登れない」というイメージを持つのか、初心者はつい力みがちです。
しかし、ジムに行って周囲を見渡してみると、ボディビルダーのようなムキムキの人は少なく、むしろ細い人でも軽快に登っている姿が観察できると思います。
もちろん、彼らもクライミング用の筋力トレーニングをしているわけですが、それと同様に重要なのがテクニックです。
たとえば、腕の力で壁に張り付くと、両腕がふさがってしまい、次のホールドに手が出せなくなります。そこで、腕を伸ばし、重心を下げて足に体重をかけるだけで、次のホールドに腕が伸びるようになります。うまい人が登っているのを観察すると、よく分かると思います。
これは慣れの問題もありますが、初心者の頃から頭の片隅に入れて置くだけで、その後の上達速度が速くなります。
はしごを登るように、足は必ずついておく
上級者の観察をしていると、必ず目にするのが、足が壁から離れ、腕だけで体を支えているという場面です。とてもかっこいいですが、最初のころは無謀なのでやめておきましょう。
6級くらいのレベルまでは、必ず足が付いたまま登れるような設定になっています。皆さんも梯子を登るとき、足を宙に浮かせたりしませんよね。初めのうちはボルダリングだからといって気張らず、梯子を登るような感覚で登ってみましょう。
もし途中で足が離れてしまったら、足への力の入れ方や位置、体勢に問題がある場合がほとんどです。重心の位置などを考えて再トライしてみましょう。
注意点に気を付けて、楽しいボルダリングデビューを
ボルダリングは気軽に始められて、とても楽しいスポーツです。またジム代と靴代だけで続けていけるので、お財布にも優しいです。
しかし一方で、自分の体力や筋力、そして周りで登っている人に気を配らないと、容易に怪我をしたり大きな事故につながったりするスポーツでもあります。楽しくなると周りが見えなくなってしまいがちですが、周囲に気を配ることだけは忘れないようにしてください。
なにはともあれ、最低限のマナーにさえ気を付けていれば、とても簡単に始められるので、ぜひ一度ボルダリングジムに足を運んでみてください。
岩と自転車をこよなく愛するが、普段は用事がないと家から出ないインドア派。何事も形から入るタイプで、ギアの知識だけは人一倍。ギア好きをこじらせてアウトドア用品店でバイトをしていました。人生の3分の1を海外で生活し、現在もヨーロッパにて勉強中。海外のアウトドア文化も発信していければと思っています。
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