日本でのお米の消費量は年々減少傾向にあるといわれています。その理由としては、お米以外の炭水化物の選択肢が増えたことや、一人暮らしでお米を炊くのが面倒だという理由が挙げられています。
それに伴いキャンプでのご飯もお米のみならず、ラーメンやパスタ等の麺類からパン類まで多種多様なバリエーションになりました。
筆者もアウトドアでのご飯はインスタント食品で済ませてしまうことが多いです。その理由として、キャンプでの炊飯はアルミ製のメスティンをはじめ、ステンレス製の飯盒、または鍋が主流となっているからです。
しかし、それらの欠点としては火加減を間違えると上手く炊けなかったり、お米がくっついてしまって洗うのが面倒ということがあります。そのため、お湯を沸かすだけでできるラーメンやアルファ米などが好まれているようにも感じます。
今回紹介するのは、それらの欠点を補い、簡単においしいお米が炊け、尚且つくっつかないので洗うのも楽なライスクッカーです。
なぜ飯盒にチタンが使われてこなかったのか
飯盒を調べているとほとんどのものがステンレスでできています。また、現在流行しているトランギアのメスティンはアルミ製です。カップやお箸などでは好まれて使われているチタンですが、何故飯盒には使われてないのでしょうか。
それは、チタンの熱伝導率にあります。チタンはステンレスやアルミと違い熱伝導率が非常に低く、火が当たっているところだけが熱くなり全体的に温まりにくいです。そのため、ご飯を炊く際には一点に熱が集中してしまい向いていないといわれています。同じ理由でチタン製のコッヘルやフライパンもあまりありません。
それを特徴的な構造で克服したのがチタン製品を多く扱っているKeithです。
Keithチタンライスクッカーの構造と特徴
次にKeithのチタンライスクッカーの構造を見ていきます。このライスクッカーは外釜と中釜の二層構造になっています。
重さは256gと軽量で、チタンなのでとても頑丈です。
このライスクッカーは内窯に穴が開いており、そこから蒸気を取り入れることによって中のお米を炊くという方法をとっています。同じ方式の炊飯器としてはバルミューダのThe Gohanという家庭用炊飯器もあります。この構造を採用することによって、チタンの欠点であった熱が一点に集中することなく全体をまんべんなく温められるようになりました。
ちなみに、この内釜の中に同社のTi3205 500mlのカップがすっぽりとおさまるほか、一般的なOD缶もすっぽりとおさまり、その上にバーナーなども乗せられるので持ち運びも便利です。
また、この内釜の両側にはお米の大体のグラム数とそれに対応した水の量が測れるようになっています。
炊けるお米の量は最大で280gで、一合が約150gなので約二合までならば炊くことができます。
外窯は少し深めのコッヘルとしても使うことができます。お湯を沸かしたり、パスタをゆでたりなどはこなしてくれますが、何かを焼いたりするときはくっついたりしてうまく焼けないので注意が必要です。
本体は薄めに作られているのでお湯が沸く速度はそれなりに早いです。
外釜の中に内釜をセットして蓋を閉めると両サイドにある留め具で蓋をおさえることができます。この上に突き出ている部分は直接焚火に当てるときに木の棒を通したりして吊るせるようになっているほか、カラビナを使いリュックに括り付けたりと何かと便利です。
また、本体にはチタン製の取っ手が付いています。チタンの熱伝導の悪さが功を奏し、直接火が当たらない限りは調理中でも熱くならないので簡単に位置を調節したりすることができます。
パッキンについて
このライスクッカーを調べていると、日本のアマゾンのみならず、世界中の購入を検討している人がパッキンについての質問をしています。
このライスクッカーの内釜にはパッキンが付いており、密閉性を高めているので、このパッキンが劣化したらメーカーから替えを買うことができるのか、なくしたら使えなくなってしまうのではないかということが質問されています。
結論から言うと、筆者はパッキンを洗うのが面倒なので付けていませんが、問題なく使用することができますし、お米もうまく炊けます。これは、アメリカのアウトドア掲示板やドイツのアマゾンのレビューでも確認しましたので、おそらくそれほど気にする問題ではないと思います。
どうしてもないと気になって仕方がない人は、なくした時にメーカーに直接連絡して送ってもらった人がアメリカにいるみたいなので、おそらく取り寄せは可能だと思います。しかし、メーカー側の対応はそれほど早くないので注意が必要です。
お米の炊き方
次に、このライスクッカーでのお米の炊き方を紹介していきます。
まず、炊きたい量のお米を内釜に入れます。今回は一人用で100g炊きたいので、下から一つ目の穴を目安にしてお米を入れました。そして、お米を研ぎます。
次に、内釜をセットします。内釜に先に水を入れても下に開いている穴から出てきてしまうのでセットしてから入れます。
ここで注意するのが、底面は外釜と内釜の二重構造になっており、間に空洞があります。その空洞に、内釜の下にある小さい穴から水が落ちるのには数十秒の時間がかかります。したがって、今回の水の量は二つ目の穴まででいいのですが、初めは多めに入れて下に落ちるのを待ちます。
数十秒すると下の穴から水が落ち、ちょうどいい量になりました。この水が落ち切って目安のラインまでいくのが正しい水の量です。
そしたら蓋をして、火にかけていきます。このように、ライスクッカー自体が縦長なので小さいバーナーだと少し頼りない感じになります。筆者が持っているMSRのバーナーは少し歪んでいるのでさらに安定が悪いですが、中に水を入れたら重みでそれなりに安定します。おススメは大きめのバーナーを使うことです。
Petromax fk1と合わせるとさらに高層になります。お茶用のお湯も同時にわかせるのでとても便利です。
火にかける時間は大体、穴から湯気が出てき始めてから15-20分くらいです。説明書には湯気が出始めたら弱火にして15-25分と書いてありますが、fk1やアルコールバーナーを使うときは火の加減ができないので無視しています。それでも湯気が出てきてから20分くらいするとちょうどいい具合に炊きあがります。
大体このような炊きあがりです。このお米は良い日本米ではなく海外に売っている日本米に近しいものなので、お米愛好家から見たらどう見えるかわかりませんが、筆者は満足しています。
この時に注意することが、内釜と外釜の間にまだ水が残っているので、傾けてお米を出そうとすると水が内釜に入ってきてしまって、下の方がべちゃべちゃになってしまうということです。なので、内釜を取り出して器に移すか、内釜を外して先に水を出すことをお勧めします。
お米を炊く以外の使い方
この商品はライスクッカーですが、工夫の仕方によっていろいろなことができます。
お湯を沸かす
まず、外釜だけでお湯を沸かすこと。当然できます。
スチーマーとして使い温野菜も作れる
このライスクッカーはお米を直接火にかけているわけではなく、蒸気で炊いています。
ということは。端的に言ってしまえば、機能的にはほとんどスチーマーと変わりがありません。したがって、ブロッコリーやニンジンをいれて温野菜を作ることもできますし、小さい肉まんを一つだけ蒸すこともできます。
炊き込みご飯
筆者は炊き込みご飯が好きなので、このライスクッカーの構造をみて作れるのか不安でしたが、作ってみたら簡単に炊き込みご飯を作ることができました。しかし、醤油やみりんなどを少し多めにしないとライスクッカーの構造上、味が薄くなります。このあたりは工夫が必要だと感じました。
メリットとデメリット
次にメリットとデメリットを簡単に紹介していきます。
メリット
まずメリットとしては
1. 軽くて持ち運びやすい。尚且つ頑丈。
2. 火加減をそれほど気にしなくてもとにかく簡単に炊ける
3. くっつかないから掃除が楽
4. 食材の香りが残りにくい
5. 金属アレルギーになりにくい
6. 金属が擦れる音がしない
ということが挙げられます。
1. 軽くて持ち運びやすい。尚且つ頑丈。
軽くて持ち運びやすく、尚且つ頑丈なので取り扱いが楽という点はアウトドア製品において一番重要な点だと思います。
2. 火加減をそれほど気にしなくても簡単に炊ける。
火加減をそれほど気にしなくても簡単に炊けてしまうのもメリットの一つです。適量の水を入れて、適切な時間火にかければ炊くことができます。ステンレス製だと火の調節ができないと焦げ付いたり芯が残ったりするので、楽に炊けるのはいい点です。筆者は家に炊飯器がないので毎日使用しています。
3. くっつかないから掃除が楽
また、お米を直接火にかけないので焦げ付くことがなく、キャンプでもサッと水と手で洗うだけでそれなりに綺麗に洗うことができます。焦げ付くと水につけたり、取れなかった時に次使うのが億劫になったりしてしまいます。食洗器ももちろん対応しているので、家庭で使う場合も簡単です。
4. 食材の香りが残りにくい
さらに、チタンの特徴として食材の香りが残りにくいということがあります。そのため、炊き込みご飯を作った後に洗って、白米を炊いても炊き込みご飯の香りがすることはありませんし、温野菜を作った後に洗い、白米を炊いても野菜の香りが付くことがありません。
5. 金属アレルギーになりにくい
また、チタンは耐腐食性が高く、塩水等にも強く金属が溶けだしにくいので、金属アレルギーになりにくいのもメリットです。それによって金属臭がしないのもおすすめポイントです。
6. 金属が擦れる音がしない
あとは個人的なことですが、筆者はステンレス製の鍋とフォークやスプーンが接触しているのを見るのも、音を聞くのも苦手ですが、チタンだとあまり感じないので、もし同じ症状の方がいればチタン製の製品はとてもおすすめです。
デメリット
一方、デメリットとしては
1. 少し大きいので登山やファストパッキングには適さないかも
2. おこげを楽しめない
3. 炊き込みご飯は工夫が必要
4. 安定性が多少悪い
5. 変色する
1. 少し大きいので本格的な登山やファストパッキングには適さないかも
そもそも本格的な登山でお米を炊く人も少ないかと思いますが、やはり本体が大きいので、それなりの面積を占有してしまいます。内釜の中にOD缶やバーナーを入れたりすることができるのでパッキング方法によっては持っていけるかもしれません。
2. おこげを楽しめない
次のデメリットとしては、おこげが楽しめないということです。土鍋や飯盒でお米を炊くと高確率でおこげができ、それが好きな人もたくさんいます。しかし、このライスクッカーではおこげを作ることは残念ながら不可能に近いです。
3. 炊き込みご飯は工夫が必要
それと同じ理由で、炊き込みご飯は多少の工夫が必要になってきます。普段通りの量で炊き込みご飯を作ってしまうと、ライスクッカーの構造上、内釜と外釜の間にもだし汁が落ちてしまったり、蒸気で炊くのでうまく味が乗らなかったりします。したがって、従来のレシピとは違う方法で炊かなければなりません。
4. 安定性が多少悪い
また、縦長なフォルムなのでバーナーが小さい場合や並行ではないところでは多少安定性が悪いです。小さいバーナーに乗せているときはテーブルを小突いてしまうだけで落ちてしまうこともあります。
5. 変色する
また、チタンの特徴として火が当たったところが変色していきます。これを味ととらえるか汚れととらえるかは人次第です。お米の味には影響はありません。
次のキャンプではお米を簡単に炊いてみては?
昨今、アルファ米の登場やインスタントラーメンがとてもおいしいことから、お米を炊く以外の選択肢も増えました。しかし、外で食べる温かい炊きたてのご飯は格別です。この簡単に持ち運べ、簡単に炊飯できるライスクッカーで、次のキャンプでは温かく、粒の立ったご飯を炊いてみてはいかがでしょうか。
岩と自転車をこよなく愛するが、普段は用事がないと家から出ないインドア派。何事も形から入るタイプで、ギアの知識だけは人一倍。ギア好きをこじらせてアウトドア用品店でバイトをしていました。人生の3分の1を海外で生活し、現在もヨーロッパにて勉強中。海外のアウトドア文化も発信していければと思っています。
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