釣りにはフィールドや道具、楽しみ方のバリエーションによって様々なスタイルがあります。今回は「渓流釣り」に絞って、ビギナーでも簡単に始められる「いろは」を紹介します。
若者の定番スタイル「ルアーフィッシング」
ルアーフィッシングは、19世紀のヨーロッパで誕生した釣法であるとされていますが諸説あり、わが国では似た漁法が300年前から伝承されているともいわれます。しかし現代のスタイルは1980年代後半からの釣りブームと歩調を合わせるかのように本格的に広まった、比較的新しいタイプのフィッシングです。
それまで主流だった脈釣り(生エサ釣り)と違い、生きたイモムシやミミズを必要としないあたりが若者や女性に歓迎されたのでしょう。渓流に限らず、海・湖などあらゆるウォーターフィールドに対応している点でもグンを抜いています。
異なるフィールドや対象魚であっても、ロッド(竿)とリール(糸巻き)、ライン(糸)はほとんどの場合共通して使え、ラインの先端に結びつけるルアー(擬似餌)のみを使い分けることで楽しめるというお手軽な点も、人気が沸騰したゆえんといえるでしょう。
渓流に適したルアー
渓流での標準的な対象魚は、イワナ、ヤマメ、ニジマスなどサケマス類となります。少し下った中流域や湖沼では、おなじみのブラックバス(大口バス)が主流ですね。
東欧で生まれたルアーの歴史は、湖上に張り出したバルコニーのレストランで誤って落としたスプーンが、ヒラヒラと小刻みに光を反射させながら沈んでいく際に、それを追ってアタックした魚(おそらくブラウントラウト)が目撃されたことからはじまります(諸説あり)。
なので、渓流では「スプーン」は王道と考えていいでしょう。もし大物のニジマス、イワナ狙いなら「ミノー(プラグ)」も用意したいですね、かなり効果的です。
それから、水中でのスプーンの動きを応用し、より刺激的な光の乱反射を回転することによって再現した「スピナー」も携帯すべきでしょう。筆者の経験では、「魚の反応が乏しく困ったときはスピナー」です。
最近では、おもにバス釣りに用いられる、一般に「ワーム」と呼ばれる「ソフトルアー」も渓流で使われつつあるようです。
いずれにしても、季節や気象条件、水温、川のにごり具合、魚の活性レベルなどをよく観察して、喰いがイマイチなら面倒臭がらずにこまめにルアーを交換するきめ細かさが釣果の決め手といえます。
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フライフィッシング
毛針を使う釣りには、おもにヨーロッパで発達した「フライフィッシング」と、日本古来の「テンカラ釣り」の2種類があります。日本におけるフライフィッシングは、明治35(1902)年に英国商人=トーマス・グラバーが日光で行ったのがはじまりと伝えられます。
「フライフィッシングは難しそう」と思われている方は多いのではないでしょうか。確かに、オモリを一切使わず非常に軽いフライ(毛針)を遠くまで飛ばすには、ある程度の練度が必要です。まして遠くから小さなポイントに正確にキャストするには、数々のテクニックを習得しなければならないのも事実です。
しかし、まずは前に飛ばすことのみに限定すれば、初心者でもそれほど難しいものではありません。毛針が軽い分ライン(糸)は飛ばしやすいウェイト感のあるものを使用するため、コツをつかめば意外とすんなり飛ばせるようになるはずです。距離やコントロールは、実践の中で身につけていく「上達の楽しさ」も体験できます。
毛針には、形状や素材、色だけでなく、地方によっても様々な種類があります。対照魚や自然条件などによって適宜に使い分けましょう。
フライフィッシングはラインを大きく振りまわすため、狭くて足場の悪い危険な渓谷や、ブッシュ(川面を覆う樹木)の深い場所、人が多く安全が確保できない場所には適しません。
テンカラ釣り
その起源は、江戸時代初期までさかのぼる「テンカラ釣り」は、日本の伝統的釣法であり、難しさや醍醐味、シンプルな道具などから「最後にたどり着く釣り」などとも語られ、得も言われぬ奥深さがあります。
テンカラ釣りの竿にはリールは着いていません。したがって稼働半径は5〜9メートルと狭く、ポイントへの慎重なアプローチを必要とします。これは、魚から気づかれにくい遠く離れた場所からキャストするルアーやフライとの大きな違いです。
毛針はフライフィッシングで使う物とほぼ同じ。道糸(ライン)には、昔は馬素(馬の尻尾の毛)を撚ったテーパーライン(元から先に向かって徐々に細くなっている)が使われましたが、現在は安価な合成繊維製のレベルライン(太さが均一)が一般的です。
この道糸の先に0.6〜1メートルほどのハリス(ナイロンやフロロカーボン製)と呼ばれる透明の糸を接続し、先端に毛針を結びつけただけのいたってシンプルな仕掛けです。
また、テンカラやフライフィッシングにハマってしまった人は、筆者も含めほぼ例外なく毛針の創作にのめり込みます(材料も多数市販されています)。自作のフライで釣れたときの喜びは、経験者にしかわからない至福の瞬間です。
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渓流釣りの極意
釣法はなんであれ渓流釣りの第一歩は、季節や水温、水量、流速、深さ、にごり(澄み)具合などを勘案し、魚の居場所を読むことにあります。魚種や大きさによっても定位するポイントが異なるため、最初はむずかしいかも知れませんが、ベテランの経験談やマニュアルを参考にチャレンジしてみましょう。
流れの速い瀬における基本的なポイントは、浮石(水面から一部が出ている比較的大きな石)の後ろ、部分的に流れが緩くなっている箇所です。しかし、そこへ直接投げ入れてもヒットは難しいでしょう。
ルアーなら流れからほぼ垂直にかなりポイントを飛び越した地点にキャストし、やや上流方向へ引きずるようにしてポイントを通過させると、ターゲットの反応確率は向上します。やや上流に引くことで、あえて不自然さ(流下物ではなく生き物であると思わせる)を演出するのです。
フライやテンカラなら、2〜5メートルほど上流に投げ、自然の流れにまかせてポイントを通過させます。しかしテンカラで、カゲロウなどを模した「飛び跳ね」を演出する場合は、ポイントにダイレクトに投げ込み、毛針りを上下に小刻みに踊らせて魚を誘います。
「飛び跳ね」はテンカラ独特の釣法ですが、筆者の経験ではヤマメにはあまり効果が認められず、イワナやニジマスなど比較的に警戒心が薄く貪欲な魚に向いているように思えます。
アタリ(魚の反応)や魚影が確認できたら、多少のバリエーションを加えて根気よく攻めましょう。もし反応が薄くなってしまったら、場所を移動するなどしてしばらくポイントを休ませることも肝要です。
流れが緩くて深い、いわゆる「トロ場」は大物狙いのチャンスです。ルアーもフライもロングキャストの上、疑似餌や毛針を沈ませてゆっくり攻めましょう。
大物はそれまで生き延びてきた豊富な経験値を持っており、驚くほど賢明です(特にヤマメは)。
釣った魚をどうする?
洋式のルアーやフライは「ゲームフィッシング」と呼ばれるように、釣ること自体を楽しむのが目的ですから、基本的にはキャッチ・アンド・リリース(釣れてもすぐに放す)です。
この場合、魚を弱らせないことが重要ですから、素手で直に魚体に触ることは避けなければなりません。水温10℃前後の冷水に棲息している渓流魚にとって、35℃を越える人の手につかまれたら火傷を負って衰弱してしまいます。リリースする場合は不必要に魚には触れず、やむを得ずに触れる場合は必ずグローブか軍手を使用しましょう。
和式のテンカラや脈釣りは、元来「漁」の一種であったことから「釣って成仏、食べて功徳」という言葉が示すように、捕獲して食すことを目的とします。渓流を管理する漁業組合も、サイズ制限はしますが規定サイズ以上の魚の持ち帰りは一般に禁止していません(一部を除く)。
釣った魚をリリースするかビクに入れるかは、釣り方やスタイルに関係なく釣り人それぞれの考え次第といえるでしょう。
渓流釣りには、ゴミを放置しないなど当たり前のマナーだけでなく、「遊漁券」を事前に購入すること、日没から日の出までは禁止、釣った魚を別の河川や支流に放流しない、定められた釣法以外不可…など厳格なルールがあります。現地の規則を事前によく調べ、必ず守りましょう。
これらは釣りを楽しむフィッシャーマンの掟であり、いつまでも魚影の濃い美しい渓流を維持していくための約束です!
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