新型コロナウイルス感染症の騒動が発生してから数ヵ月が経過しました。これまでさまざまなスポーツイベントが中止になりましたが、最近少しずつ開催され始めています。
そのような中、大会主催者の苦悩を聞く機会があったので、まとめたいと思います。
トレイルランニングレースが少しずつ再開され始めた
最近、ありがたいことに、小規模のマラソンやトレイルランニングのレースは再開され始めました(フルマラソンなど参加人数が多いイベントは、まだ延期が続いていますが)。私も久しぶりにレースを走ってきました。このような状況下でレースを開催してくれることに感謝です。
再開したトレイルランニングレースの参加基準
大会に参加して感じたのは、主催者はさまざまなリスクを想定しながら運用してくれているなということです。
大会を開けば、参加者同士の感染リスクがあります。そのためレースは、トレイルランニングの協会が発行したガイドラインに沿って運営されています。たとえば、あるレースでは参加するにあたって以下の条件があります。
・検温や体調管理表の提出を義務づける
・厚生労働省の接触アプリのインストールを前提条件とする
・ブリーフィングや受付の方法を変更する
・参加者の居住区を限定する
1. 検温や体調管理表の提出
参加者はレース当日までの1ヵ月間、毎日の検温や体調管理表の記入が義務づけられています。感染の疑いがある選手の参加を不可とするためです。これを提出して問題なしとならないと、レースに参加できません。
日ごろ体調管理に気をつけようと言われても、なかなかできないものです。今回レースに参加するにあたって、指示された項目を毎日チェックしていると、レース後もその症状が出ていないか自然と意識する習慣ができたので、この規則はその点でも良かったと思います。
2. 厚生労働省の接触アプリのインストール
厚生労働省の接触アプリ(COCOA)のモニタリング記録の提出が義務づけられています。記録期間はレース当日までの1ヵ月間です。
(COCOAの画面より)
「陽性者との接触を確認する」というページを開くと、陽性者との接触履歴を把握できます。
仮に通知が来た場合、大会参加を見送るのはもちろん、周りの人を守るために対策を取ることにもつながります。そういった意味で、このアプリのインストールを義務づけるのは非常に良いことだと感じます。
3. ブリーフィングや受付方法の変更
一般的にトレイルランニングレースでは、レース前日にコースの解説や変更点、通過で注意すべきポイントを解説してくれるブリーフィングがあります。これは選手の安全にも関係するので、レース必携品の確認と同じく参加が義務づけられています。
再開されたレースでは、感染症対策として、ブリーフィング内容をホームページで告知したり、解説が必要な場合は動画共有サイトで詳細を伝えたりしています。
そのため見ない人が出る可能性もありますが、トレイルランニングの場合、多くの選手はコースに合わせて戦略を練りますし、大体の選手は登山者でもあります。よって、ほとんどの方がちゃんと確認していると思うので、このやり方でも問題はないと個人的には思います。むしろ何度も確認できるので、逆に良い試みだとも感じます。
4. 参加者の居住区を限定する
感染症拡大防止のために、他の都道府県からの参加者を制限するレースもあります。参加できない人にとっては寂しいですが、感染を拡大させないためには必須と言えるでしょう。
再開したトレイルランニングレース当日の運営
レース当日の運営でこれまでのレースと異なるのは、主に以下の点です。
・スタートはウェーブ方式を採用
・ボランティアの数は最小限に抑えて開催する
・エイドは水のみ
1. スタートはウェーブ方式
スタートは選手同士が近づかないよう、ウェーブスタート方式を採用しています。
これまでのレースだと、スタート後にすぐ同じ力量の選手同士が集団になりますが、ウェーブスタートの場合はいきなり単独走になるので、自分のペース配分に集中する必要が出てきます。
ゴールしてしばらくしないと自分の順位が分からないというデメリットはありますが、周りに惑わされず自分のペースに集中できるというメリットも感じます。トレイルランは自己管理がどれだけできるかの戦いでもあるので、自分の力を出し切るにはウエーブスタート方式は良い方法だと感じます。選手同士の接触も少ないので、感染拡大防止という点でも理に適っています。
2. ボランティアの数は最小限
トレイルランニングのレースに欠かせないのが、ボランティアの支援です。エイドでの食べ物や飲料の提供はもちろん、レース途中の必携品のチェック(ライト点灯など)や分かりにくい分岐の案内、救護者のサポートなど多岐にわたってサポートしてくれます。
私はスイーパー(最後尾の選手と一緒に走る役割)と、コースの分かりにくい分岐点での誘導、エイド運営を経験したことがありますが、限られた人数で回すとなると大変です。
ですが、ボランティア同士の接触を避けるため、人数を抑える必要があります。結果、分かりにくいコース分岐に人を配置できなかったり、エイドの内容を変更したりといった運営にせざるを得ないのは仕方ありません。
主催者がこれまでと同じように大会を運営するのは難しいでしょう。参加者はこの点をしっかり押さえておいてください。
3. エイドは水のみ
エイドについて一つ大きな変更があります。感染症防止のため、水だけのレースがほとんどだということです。
エイドで地元の名産品を楽しみにしていたランナーにとっては寂しいでしょう。しかし、これは逆に、トレイルランナーとしての実力が試される良い機会とも言えます。
本来、山では自分が必要とするエネルギーは全て自分で持つのが常識ですし、長距離縦走の練習はいつも補給食は持って出かける人がほとんど。ですので、この変更でショックを受けた人は、周りにもあまりいないように感じました。
レースの必携品の他に、自分で補給食も持つとなると、重量はかなり重たくなります。レースに出ると、自分の筋力がいかに不足しているか感じさせられます。
強い選手は常にある程度の荷物を持って練習中も走る人が多いので、重たい荷物を持ちながらのトレーニングが不足しているなと実感させられました。そうした気づきが得られたのも、この変更があってこそだと思いました。
主催者側はレース開催に向けて様々な交渉をしている
大会主催者は、ここが最も大変なのではないかと思います。
トレイルランニングは公道や私道を使って開催されるスポーツなので、現地の自治体やその土地に住んでいる方々と交渉していく必要があります。
それにはその土地のことを熟知しなくてはなりませんし、大会開催のためにその土地に貢献する必要もあります。私が運営に関わったレースでは活動の一例として、レース以外の日に登山道の整備や山のゴミ拾いなどを行いました。
このように、大会開催前にも多くの準備やコストが必要になります。
そのコストについて、これまでのトレイルランニングレースより負担が増えているなとレースに参加して感じました。特に大会開催前のコスト面で強く思いました。
まず、ゼッケンが自宅に送付されてきます。これまで大会要項が送られることはあっても、ゼッケンはありませんでした。ですが、ゼッケンの送付には仕分けの作業が追加で発生します。封筒に誤ったゼッケンを入れるわけにもいきません。
また参加賞がTシャツであった場合、そのサイズも仕分ける必要があります。これらをレース開催前に別で行うのは、けっこうな労力やコストが必要でしょう。にもかかわらず、大会主催者側はエントリー費用まで返金しようとしてくれるので、正直「大丈夫かな」と不安になります。
最近はエントリー費用が返ってこなかった場合、ランニングエントリーに使用するサイトなどで、大会が良くない評価をつけられることも多いようです。その対策として返金しているのかもしれません。
しかし、トレイルランは台風などでどうしても開けない可能性が、十分想定されるスポーツです。賛否両論ありますが、そういった場合の返金対応は必要ないのでは、というのが私の本音です。エントリーする選手は、今後もトレイルランニングのレースを開催してほしいのであれば、エントリー費用は大会開催への投資と考えるべきだと思います。
まとめ
今回は感染症対策を取りながら開催されたトレイルランニングレースの現状についてお伝えしました。
開催に向けての課題はあくまで一例ですが、大会主催者はこれ以上に様々な事態を想定しながら運営に当たっています。私達が日頃の練習の成果や達成感を味わうには、こうしたリアルなレースの存在が必要不可欠です。
是非ともこの先もレース開催に向けて頑張って欲しいですし、大会主催者側も参加する選手に協力してほしいことはもっとお願いすべきだと思います。
また、選手もそれを理解して大会にエントリーすることが何より大切だと思います。
自身の経験を元に、トレイルランニングの競技力向上に関連した情報などを発信しています。
トレイルランだけでなくファストパッキングも好きなので、自身の経験を元にオススメギアの紹介も発信していきたいと思います。
【2019戦績】
・熊野古道マウンテンランレース 準優勝
・スパトレイル3位
個人ブログ
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Instagram
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