外岩クライミングとは、河原や林の中にある自然の岩を登るクライミングです。
自然の中で行う外岩クライミングは開放感があり、岩を登るという行為はインドアクライミングとは全然違うので、新たな刺激にもなります。一方で、インドアとは違い多くの危険も潜んでいるので、注意しなければなりません。
この記事では、主に外岩ボルダリングに焦点をあて、始める際の注意点や持ち物を紹介します。なお、岩場はその土地によってローカルルールなどがあるので、できれば、事前にその土地についてリサーチすることをおすすめします。
外岩クライミングのシーズン
アウトドアだから夏ではと思われがちですが、日本では、夏はむしろシーズンオフで、秋から春先にかけてが外岩クライミングのシーズンになります。
何故かというと、夏は湿度が高いので岩肌が湿っており、滑りやすくなっているため高グレードの課題が登りにくいからです。一方、秋から冬は空気が乾燥し、岩肌のフリクションがよくなります。いわゆる「岩が締まっている」状態になるので、とても快適に登れます。
また、多くの岩場は河原や林の中にあるので、夏は蚊やマダニなどの虫がよく活動しています。一方、冬はそれらを気にする必要がないので、その点においても快適です。
つまり、これからの季節は外岩クライミングにうってつけということです。
外岩クライミングの始め方
ここからは、各ステップに分けて外岩クライミングデビューまでの道のりを書いていきたいと思います。
まずは一緒に行く人を見つける
外岩デビューで一番重要なのが、一緒に行く人を見つけることです。
外岩は上級者を除いて、あまり一人では行きません。一人だと持っていけるマットの量が限られる、怪我をしたときに救助を呼べる人がいない、といった理由があるからです。したがって、必ず友人やジムでよく会う人などと一緒に行くようにしてください。
どうしても一人で行きたい場合や一緒に行く人が見つからない場合は、なるべく大きく有名な岩場を選びましょう。大きな岩場には大抵、誰か他の人がいるからです。
次に岩場を調べる
一緒に行く仲間を見つけたら、近くの岩場を調べましょう。
調べ方としてはインターネットでもいいですが、よほど大きな岩場ではない限り詳細な情報が出てくることはありません。一番いいのは、普段通っているクライミングジムの店員さんに聞いてみることです。彼らは近場の岩場を知っている可能性が非常に高く、知識も豊富です。
また、岩場に関する本も出版されているので、それで自宅の近くの岩場を調べるという手もあります。
これらはエリアによって上下や番号があるので、お住いの地域に合わせて購入してください。
トポを見つける
行きたいエリアを見つけたら、次にトポを見つけましょう。
トポとは地質学におけるトポグラフィーの略と思われますが、クライミングにおいては「岩場の地図」を意味します。どのエリアにどの岩があり、その岩にはこういう課題がある、という情報が詰まっています。
このトポが無いと課題のグレードも、どこに何があるのかもわからないので、必ず入手しましょう。
トポの入手方法は、岩場によって違います。筆者が知っているだけでも、インターネットで公開している岩場、近くのジムで販売している岩場、近くにあるクライミングとは一見関係なさそうな小さな商店で販売している岩場など、様々です。
入手方法がわからなかったら、やはり近くのジムで聞いてみるのが手っ取り早いと思います。
トポを入手したら、どこの岩で何を登りたいかをよく考えて、計画を練りましょう。
持ち物を用意する
次に、持ち物を用意します。外岩クライミングに必要な持ち物を記載しておきます。
▼絶対に必要なもの
・クライミングシューズ
・ボルダリングマット
・チョーク
・ブラシ
・食べ物と飲み物
・ファーストエイドキット
・ヘッドライト(夜までいる場合や山の中の岩場に行くとき)
この中で、外岩クライミング用に新しく用意しなければならないのは、ボルダリングマットです。これに関しては、選び方を別の記事にまとめましたので、そちらを参考に自分の用途に合ったマットを選んでください。これで準備は完了です。
▼外岩ボルダリングにとって重要な「ボルダリングマット(クラッシュパッド)」の選び方
https://outdoor-hacker.com/climbing/bouldering-mat-select/
注意するべき点とマナー
外岩はインドアクライミングとは違い、原則無料で利用できます。しかし、岩場は誰かの土地であり、クライマーは無料で利用させてもらっているという点は覚えておきましょう。
したがって、外岩にはマナーがあり、守れない場合は非公開エリアや立ち入り禁止になってしまう可能性もあります。岩場の保全とクライミング文化の存続のため、しっかりとマナーを守りましょう。
公開エリアと非公開エリア
ここで公開エリアと非公開エリアについて、ふれておきましょう。
岩場には公開エリアと非公開エリアの2つがあります。本やトポがある岩場は大抵、公開エリアになっており、自由に利用できます。一方、本やトポが古い場合、その場所は非公開エリアになっている可能性もあります。
非公開エリアは、人が多くなりすぎた、マナーを守れない人が多すぎるなどの懸念から、その情報を絞っているエリアです。したがって、非公開エリアの場合はトポや課題などをインターネットで共有することや、SNSに上げることは控えてください。そのような点も含めて事前リサーチを欠かさないようにしましょう。
外岩クライミングに行く際のマナー
次に岩場のマナーです。一般的なマナーはもちろん、岩場独特のものもあります。
一般的なマナー
▼ゴミは絶対に持ち帰る
たまにお昼ご飯のゴミが置きっぱなしになっていることがあります。人として当たり前ですが、ゴミは絶対に持ち帰ってください。
また、吸い殻などが目立つエリアもあります。基本的に山火事を防止するために、森の中では火気厳禁です。特にクライミングシーズンは空気が乾燥しており、落ち葉など燃えやすいものがたくさんあります。煙草を吸いたい場合は携帯灰皿を用意した上で、車の中などのプライベートなスペースで吸うようにしてください。
▼駐車場や停めていい場所を事前に調べる
岩場には専用の駐車場があるところが多いです。しかし、場所によってはとてもわかりにくかったり、奥まっていて見つけにくかったりするので注意してください。
駐車所の位置はトポやマップに乗っている場合が多いので、事前にリサーチしてください。間違っても、路上などに駐車しないようにしましょう。
▼入山料が必要な場合も
岩場によっては山の中にあり、入山料が必要なところもあります。行ってから気づいたということがないように、事前のリサーチを欠かさないようにしましょう。
▼挨拶は大事
岩場によっては民家のすぐ近くにあったり、駐車場自体がその土地の住人の好意で貸し出されたりしている所もあります。場合によっては、その土地の住民が岩場の清掃や保全を行っている場所もあります。したがって、近隣住民に出会った際には、挨拶を欠かさないようにしましょう。
岩場でのマナー
▼登った後は必ずブラッシングをして岩を綺麗にする(金属製のブラシはNG)
登る際にチョークを使った場合は、登った後にブラッシングで綺麗にしましょう。なお、金属製のブラシを使用すると岩を削ってしまうので、使う際は天然毛か人工毛のものを使ってください。
▼松脂入りのチョークは使わない
最近は松脂入りのチョークは減ってきていますが、たまに使っている人を見かけます。
松脂入りのチョークを使うと、岩に松脂がべったりと残ってしまい、場合によっては課題自体を壊してしまいます。特に液体チョークを使う場合は裏の成分表を確認し、松脂やロジンと書かれているものは使わないようにしてください。
▼岩によっては登ってはいけない岩がある
例えば、ある岩は近年、その土地の信仰対象になっていた岩であったことが発覚し、登るのが禁止になりました。しかし、そのことを知ってか知らずか、登っているクライマーを見かけたことがあります。
このような情報はSNSやインターネット上で注意喚起されている場合がほとんどですので、事前に調べておきましょう。
▼岩を占領しない
インドアクライミングと同じですが、周りに人がいる場合、岩を占領しないように気を付けてください。
▼自然は大切に
岩場は人間だけではなく、生き物とも共有する場所です。蚊やハエだけではなく、ホールドになるような岩の隙間にはよく生き物が住んでいることがあります。邪魔だからといって殺さずに、ちょっと移動してもらうようにしてください。
チッピング問題について
近年、人口の増加にともなって岩場で様々な問題が出てきています。その一つが、チッピングです。
チッピングとは、岩をドリルやハンマーなどで削って、意図的に形を変えて登りやすくしたり、登れなくしたりする行為です。近年では国内の代表的な岩である「忍者返しの岩」や最難関課題である「那由多」がチッピングの被害を受けています。
チッピングは法律的に明確な違反ではないものの、クライミングという文化圏内においては違反行為です。もしハンマーやドリルを使っている人を見かけた場合は、その岩場の管理者やよく知っている人に報告をしてください。
なお、岩も自然のもので、登っていて剥がれることもあります。これはチッピングにはあたりませんので安心してください。仕方のないことです。
入念なリサーチと準備で良い外岩デビューを
外岩はインドアとは違い、気軽に行ける場所ではありません。どこに岩場があるのか、どこで地図を入手するのか、どうやって岩場へアプローチするのか、駐車場があるのかなど、事前に調べることがたくさんあります。また、ルールや注意すべき点もたくさんありますし、インドアよりも多くの危険が潜んでいます。
しかし、そのような点を乗り切れば、インドアとはまた違った、刺激のあるクライミングが待っています。難しい課題を登り切った時の爽快感は一生忘れられないような体験になり、夢中になってしまうこと間違いなしなので、気になっている方は是非、チャレンジして見てください。
岩と自転車をこよなく愛するが、普段は用事がないと家から出ないインドア派。何事も形から入るタイプで、ギアの知識だけは人一倍。ギア好きをこじらせてアウトドア用品店でバイトをしていました。人生の3分の1を海外で生活し、現在もヨーロッパにて勉強中。海外のアウトドア文化も発信していければと思っています。
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