トレイルランにおいてシューズ選びと同じくらい相性を重視したいのがザックです。
実は私、過去にデザイン重視で選んだザックとの相性が悪く、お蔵入りにしたことがあります。一方、今のザックは、デザインはあまり気に入っていないのですが、走りを邪魔せず、生地の硬さや荷物を入れたときのバランスが良いので重宝しています。
自分と相性の悪いザックはレースで使えません。そこで本記事では、どのような視点でザックを選んだらよいかを解説します。
ザックは慎重に選ぶ必要がある
たとえば、ザックに荷物を入れた際のちょっとした荷重の違いにより、疲労する筋肉は全く異なります。体の前方に荷重がかかると走りづらい人は、荷物が後ろに寄る設計のザックのほうが走りやすいです。
こうしたポイントを押さえながら、ザックは慎重に選びましょう。
1. 走行時の補給動作に合った設計である
トレイルランのザックが通常のザックと異なるのは、ポケットの数が多い点です。
レース中は
・補給食や水分を摂取する
・ゴミを保管する
・高低図を確認する
などの動作を走りながら行います。これらの動作がスムーズだとレース中のロスや心的ストレスが軽減されます。
私もさまざまなザックでレースを走ってきましたが、補給すべきものが取り出しにくいと、後回しにしがちですが、長い距離の自己マネジメントが必要なトレイルランで、それは致命的です。一方、ザックが自分に合った構造なら、確実に補給ができます。
この差は大きいので、ザック選定の際は、構造が自分の補給動作に合っているかを確認しましょう。
言い換えれば、自分がどのような補給動作をするのが楽なのか、知っておく必要があるということです。
2. 荷物を入れた時のバランスが良い
日頃のジョギング時など、ザックのない状態で走っている時は、自分の筋力で体を真っすぐに保ちます。しかし、トレイルランで荷物を背負った時は、装備の重さでそのバランスが崩れます。
ザックは、必要最低限の装備を入れても3kg弱になります。それを背負った状態でも通常の走行時と同じバランスを取るには、自分に合ったザックが必要です。
この荷重バランスが合っていないと、転倒のリスクが増します。また受け身を取りづらくなるため、大怪我につながりやすいです。
以前、私は六甲山で転倒し、肘を強打して肩の関節をおかしくしたことがあります。原因はハイドレーションを前に持ってきて、走りのバランスが悪くなっていたからでした。
その後、ハイドレーションを背中に入れられるザックを試してみたら、走りのバランスが改善され、同じ六甲山で自己ベストを大幅に更新できた経験があります。
3. ポケットが前後上下バランスよく配置されている
トレイルランザックのポケットは、前後左右に配置されているものが多いですが、中には脇腹部分についているなど、荷重を分散する工夫が施された構造のものもあります。
オススメは、以下のようなザックです。
体の中心部に沿ってポケットがついており、重量のある固形食やジェルのストックなどは極力ここに入れるようにしています。これにより荷重が中心から分散されず、走行中のバランスにさほど影響しません(背中のメインポケットに入れたい気持ちもありますが、荷重が後ろに寄るので避けています)
ザックの種類について
トレイルランザックには、「ザック型」と「ベスト型」の大きく2種類があります。ランナーの相性やレースの必携品・距離に応じて使い分けましょう。
それぞれの特徴
ザック型は一般的なリュックサックと同じ構造で、ベスト型はより体にフィットしたデザインです。それぞれの違いを、トレイルランで重要な以下の4要素から解説します。
1. 容量
2. フィット感
3. 生地感
4. 揺れ
1. 容量
基本的にザック型のほうがたくさん入ります。ベスト型は体とのフィット感に重点を置いているので、たくさん収納すると、体側に向かってザックが膨張し、圧迫感を覚えます。
また、ベスト型はハイドレーションパックを背中に配置できません。
ハイドレーションはもともと長距離レースに対応したもので、2リットル近い水分を入れられます。ですが、ベスト型は500mlのソフトフラスクを胸の位置につけるのを前提としています。そのため、エイド間に距離のあるレースにはオススメできません。
一方、水をそこまで気にしない距離のレースなら、ベスト型ザックで軽量化を図れるのが利点です。
私の場合、40km以上のレースが中心なので必携品も多く、必然的にザック型を使用しますが、必携品が少ない短いレースは序盤から飛ばすので、ベスト型を使用しています。荷物が少ない場合はベスト型でも揺れを感じにくく、走りの邪魔になりません。
2. フィット感
ベスト型のほうが圧倒的に良いです。何も入れていない状態だと、その上からTシャツを着てもザックを着用しているのが分からないくらいです。
ザック型も気にはなりませんが、背負っていない感覚で走れるベスト型のほうが優れています。
3. 生地感
ザック型はさまざまな生地が使われていますが、必携品の多いレースで使用される傾向にあるので、それに耐える硬めな生地が多いです。
ベスト型は伸縮性に優れた生地を使っています。もはやザックというより、服といっても過言ではないくらいです。
4. 揺れ
ザック型は荷物を多く入れても揺れがそこまで気になりません。
一方、ベスト型の場合は生地が伸縮性を持つため、着地の度に上下に大きく揺れます。また軽量化のためにファスナーを付けていないモデルも多く、中に入れたものが飛び出す可能性もあります(実際に私は飛び出ました)
荷物が多い時はザック型、少ない時はベスト型をオススメする理由はここにもあります。
結論どちらも荷物バランスが大事
ザックごとに適正容量が決まっているので、それ以内に留めた状態で自分の体に合ったバランスが取れ、自分が走るレースの距離に合ったものを戦略的に選択しましょう。
オススメのザック
距離別にオススメのザックを紹介したいと思います。
長い距離にオススメ「ULTRASPIRE ZYGOS」(ウルトラスパイア・ザイゴス)
アメリカ発のブランドです。立ち上げたBryce氏本人がトレイルランナーで、彼を含めた総勢32名のエクストリームアスリートのフィードバックを活かしながら製品を開発しています。シリアスにタイムを削り込むアスリートの試行錯誤が詰まった製品です。
また、日本におけるトレイルランニングの第一人者・山本健一選手が開発に携わっていることでも知られます。
ザック底部にカメラが収納できるポケットがあるなど、彼の遊び心も組み込まれています。
サイズ展開 | S(85~95cm)、M(95~100cm)、L(100~105cm) ※胸部の目安 |
---|---|
容量 | 14L |
重量 | 340g |
寸法 | 39x35x7cm |
想定距離 | 40km~100mile |
100mileの必携品までは入ります。収納できるポケットが全体にバランスよく配置されており、補給食や必携品を入れてもかさばりませんし、走りのバランスもいいです。小屋泊のファストパッキングにも使えます。
山で遊ぶにもレースで追い込むにも最適なザックであり、私も40km以上は基本このザックで走ります。
装備が少ない短距離レースにオススメ「SALOMON S/LAB SENSE ULTRA 8」
まさに着るザック。伸縮性にも富み、軽いです。
容量が少ないので40km程度のレースまでなら対応できますが、必携品が多いレースには向きません。
以下の動画は似た形状のモデルです。
容量 | 8L |
---|---|
重量 | 260g ※付属品込み |
想定距離 | 40kmまで |
以上、私が使用したザック限定のため厳選した内容になりましたが、距離別のオススメザックでした。
ザックはデザインも機能性も色々なので、最初はどれを選んだらいいのか分からない方もいると思います。自分に合うザックを選ぶには、
1. 自分の走りに合う荷重を見極める
2. 自分が走行中、何をどこに入れておきたいかをイメージする
3. それを満たすザックで自分の好きなメーカーを選ぶ
これが失敗しないザックの選び方です。参考にしてみてください。
自身の経験を元に、トレイルランニングの競技力向上に関連した情報などを発信しています。
トレイルランだけでなくファストパッキングも好きなので、自身の経験を元にオススメギアの紹介も発信していきたいと思います。
【2019戦績】
・熊野古道マウンテンランレース 準優勝
・スパトレイル3位
個人ブログ
https://notrailnolife.com/
Instagram
https://www.instagram.com/mtrokko/
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